子どもの頃のお正月の楽しみといえばお年玉ですよね。ところで、韓国にもお年玉はあるのでしょうか。あるとすればいつ、どのような形で渡すのでしょうか?また、いくら位が相場なのでしょうか?今回は、韓国文化を研究している筆者が、韓国のお年玉文化を8つの点からご紹介します。
韓国のお年玉には、韓国人の伝統的な考え方が反映されています。この記事を通じて、韓国人の伝統的な家族文化の一端に触れてみましょう!
韓国のお年玉事情!在住経験者に聞く8つの文化!
1. お年玉は韓国にもある!新札へのこだわりなど共通点も
現代の韓国にも日本のお年玉と同じように、年配の人が新年の挨拶の際に子どもらに現金を渡す風習があります。
かつて韓国独立以前の韓国では、新年に年配の人が現金ではなく、果物などの食べ物を渡していました。ところが時代の変化とともに果物などに代わって、現金を受け渡しするようになりました。
日本と同様、韓国の子どもたちにとってお年玉は正月最大のお楽しみとなっています。日本と似ている点としては、お年玉で渡す紙幣には新札が好まれるということがあります。そのため、お年玉シーズンの前には新札を求める人で金融機関が混雑することもあります。
一方で、新札は渡す側のこだわりであって、もらう方は紙幣の新しさよりも金額に興味がある、というのも日本と同じかも知れませんね。
2. 韓国のお年玉は旧正月に受け渡しする
日本では、お年玉は新年の初めに受け取ります。では、韓国のお年玉はいつ受け取るのでしょうか。
韓国では新暦のお正月に、カウントダウン・イベントがソウルなど各地で行われます。しかしながら、日本人の感覚からすれば非常にあっさりした印象です。休みは土日がなければ基本的に元日の一日のみで、1月2日から仕事や学校が始まります。日本と異なり、韓国では新暦の正月ではなく旧正月に新年のお祝いをするのが一般的になっています。そのため、韓国ではお年玉も新暦の正月ではなく、旧正月に受け渡しされます。
なお、韓国のお正月については以下で特集していますので、ぜひチェックしてみてください。
3. 韓国のお年玉は韓国語でセベットン(새뱃돈)!新年の挨拶「歳拝」に応えて渡す
ところで、韓国のお年玉は韓国語でどのように言うのでしょうか?韓国ではお年玉のことを「セベットン(새뱃돈)」と呼んでいます。「セベ(새배)」は、漢字で書くと「歳拝」で、目上の者に捧げる伝統式の新年の挨拶です。韓国では、旧正月に両親や祖父母など年長者にこの歳拝(セベ)をします。
歳拝では、親など目上の者が上座に座り、子どもら目下の者が新年の挨拶の言葉を言いながら伝統式のお辞儀を行います。この時、改まって伝統服である「韓服」を身にまとうこともあります。「トン(돈)」は「お金」を意味する韓国語で、「セベットン」は歳拝に応えて目上の者が渡すお金、という意味になります。
余談ですが、韓国語に慣れないうちは「トン」と発音すると、韓国人から笑われることがあります。これはお金を意味する「トン(돈)」とウンコを意味する「トン(똥)」の発音の区別が日本語話者には難しいからです。とくに「セベットン」と言う時には「トン」の前に小さな「ッ」の音が入るので、ウンコの「トン」に近い発音になりがちです。
韓国人には「新年の挨拶のウンコ」と聞こえるので、確かに悪気がなくても笑ってしまいますよね。笑われても怒らず、ネイティブに発音を教えてもらう機会だと思って矯正してもらえば、あなたの韓国語の発音は格段に上達するでしょう。
なお、韓国語のスラングについては以下を確認ください。間違って使わないよう気をつけましょう。
4. 日本との違い①お年玉袋なしでもOK!
日本のお年玉に相当する、韓国版お年玉「セベットン」ですが、日本のお年玉とは異なることもあります。これまでお話してきたように、時期が旧正月であることや、伝統式のお辞儀をする「歳拝」は日本とは異なる点です。
それ以外にも、日本ではお年玉を渡す時には必ずポチ袋にお金を入れますが、韓国では袋に入れることは必須ではなく、多くの場合はいわゆる「はだか」で現金が渡されます。
5. 日本との違い②渡す際には訓話する
また、お年玉を受け取る際には、目上である渡し手が、目下である受け取り手に対して、人生の先輩として一言、訓話めいたことを話さねばなりません。これは目上の者は目下の者を正しく導かねばならないという、儒教の思想を反映したものです。健康を願う言葉や、勉学に励むように、など、相手に応じた話がされます。
なお、韓国語の敬語表現を以下にまとめていますので、こちらも合わせて読んでみてください。
6. 日本との違い③お年玉は目上から目下に渡すもの
他方、日本ではお年玉は未就業の子どもや学生が受け取るもので、社会人になるともらえず、就職後は親にお年玉を渡すこともあります。
しかし、儒教の伝統の強い韓国では、結婚した子どもに対して親がお年玉を渡すことはあっても、逆に子どもの側から親にお年玉を渡すことはありません。あくまで、目上が目下に渡すのが韓国のお年玉「セベットン」なのです。親に現金を贈る場合には、お年玉としてでなく、差し障りのない別の方式で渡します。
7. 韓国でお年玉の相場は?物価上昇と高額紙幣の発行でお年玉の相場も値上がり?!
受け取る側はうれしい一方で、渡す側にとっては経済的負担になるお年玉。韓国でのお年玉の相場はどれくらいなのでしょうか?韓国の有力求人サイト「ジョブコリア」が、2015年に会社員728人を対象に「お年玉に関するアンケート」を行いました。
その結果によれば、大学生と就活生には5万ウォン、中高校生には3万ウォン、未就学児・小学生には1万ウォンを渡すのが適当、と考える回答者が多かったということです。渡す人の社会的立場などによっても異なってくるでしょうが、これらが一般的な額であると考えて差し支えないでしょう。
このように現在では日本の相場とそれほど大差はありませんが、かつて1960年代には10ウォン程度が普通でした。ところが、時が経つにつれ、物価が上昇して、高額紙幣の発行とともにお年玉の額も100ウォン、500ウォンと増えていきました。
1982年には500ウォン硬貨が発行されたことにより、1000ウォン紙幣もしくは5000ウォン紙幣がお年玉に使われるようになります。さらに、1990年代には1万ウォン紙幣がお年玉に使われ、 2000年代に入ってからは50000ウォン紙幣が発行されて、現在のようにお年玉の額が大きく増えました。
なお、韓国の通貨については以下の記事で解説していますので、ぜひ一読してみてください。
8. 韓国の中高生はお年玉で投資?!
日本ではもらったお年玉で欲しいものを買うか、貯金するか、という主に2つの選択肢があります。しかし、韓国の中高生にはもう一つ、投資という使い途があります。中高生が普段目にすることのない、まとまったお金を使って、債権や株式、ファンドを購入して運用するのです。
なお、この投資は金融学習の一環として親の指導のもと行われることが多いです。将来に役立ちそうな実践的学習ですね。
まとめ
いかがでしたか?
韓国のお年玉を通して、儒教から金融学習まで、韓国社会の一端に触れていただけたのではないかと思います。日本と同様、韓国にもあるお年玉。あなたも韓国人のお友達がいるのであれば、お年玉の思い出について語りあってみてはいかがでしょうか?きっと、韓国への理解、そしてお友達との友情が深まるのではないかと思います。
韓国のお年玉事情!在住経験者に聞く8つの文化!
1. お年玉は韓国にもある!新札へのこだわりなど共通点も
2. 韓国のお年玉は旧正月に受け渡しする
3. 韓国のお年玉は韓国語でセベットン(새뱃돈)!新年の挨拶「歳拝」に応えて渡す
4. 日本との違い①お年玉袋なしでもOK!
5. 日本との違い②渡す際には訓話する
6. 日本との違い③お年玉は目上から目下に渡すもの
7. 韓国でお年玉の相場は?物価上昇と高額紙幣の発行でお年玉の相場も値上がり?!
8. 韓国の中高生はお年玉で投資?!