韓流ドラマを見ていて、家族間での態度ややり取りに独特な印象を抱く方も多いのではないでしょうか。立派に独立した大人なのに親にはいつまでも子供のように振舞ったり、親に対して必ず敬語で話したりという場面をよく見かけますよね。
また、家族でない親戚や親しい人に対しても「오빠(オッパ、女性から見たお兄さん)」「누나(ヌナ、男性から見たお姉さん)」など、家族間での呼称を使うのは有名ですよね。日本人にはなかなかない感覚なので不思議に思っている方も大勢いらっしゃることでしょう。
そこで今回は、韓国文化を理解するのに欠かせない韓国人にとっての家族について、韓国人の夫を持つ筆者がご紹介します。
韓国人にとって家族とは?在住者に聞く7つの特徴とは?
1. みんな「우리(ウリ/私たち)」である韓国の独特な家族意識
韓国では頻繁に「우리 / ウリ」という単語を使うのをご存知でしょうか。우리나라(ウリナラ、私たちの国)우리회사(ウリフェサ、私たちの会社)우리가족(ウリカジョク、私たちの家族)…挙げたらキリがありません。우리은행(ウリウネン、銀行)という大手銀行まであります。
なぜこんなに우리をよく使うのかいうと、韓国の位置や朝鮮民族のルーツに関係があります。今でこそ南北が分断されていますが、朝鮮半島は昔は一つの国でした。元は大陸から続いていた国家であり、何百年も前には朝鮮半島よりもっと広い地域を支配していた時代もありました。
そのため「祖先は大陸の○○から朝鮮半島にやってきて…自分は○○の〇家の〇代目」という自己認識の方法を取るようになります。「ルーツの価値=自分」という意識が芽生えるんですね。そして自分を中心として家族、親戚…同じ民族…と同心円的に広がるフィルターを通して世界を見ていきます。
自分に一番近い「우리」が家族なわけですから、家族との結びつきは非常に強く様々な情を施そうをします。故に우리ではない「남 / ナム / 他人」という言葉を嫌います。
2. 日本は「公私」を区別、韓国は皆「家族」
一方、日本は公私、つまりウチ・ソトの区別を大事にします。島国である日本は、一度皆の和から外れると逃げ道がないので、昔から周囲の社会との関係を重要視してきました。ゆえに公私の「公」、ウチ・ソトの「ソト」での自分の役割が大事ですし、周りに迷惑をかけてはいけないという意識が形成されていきました。
「世間様」「他人様」という言葉があるようにいかに「公」が大事になのかが分かります。韓国はとにかく共通点のある人たちを、自分が中心になっている同心円の内側に巻き込んでいき、皆が家族のような感覚を形成していきます。皆家族なのでそこに表と裏、ウチとソトのような感覚はありません。
一方、日本で家族というのは「私」や「ウチ」の部分。公を大事にしないといけなかった日本人にとって「私」「ウチ」の部分を自分以外の人に見せられる場所のひとつです。
3. 年上の言うことは絶対!家族内でも上下関係はきっちりする韓国人
韓流ドラマを見ていると親に対して子供が敬語を使う場面を見かけることがありますよね。日本では家族間で敬語を基本的には使わないので不思議に思う方もいらっしゃるでしょう。
既述した通り韓国人はルーツの流れによって自分を認識していく傾向があります。それに儒教文化が根強く残っているのもプラスされて年上の人、家族内でしたら両親や祖父母は敬う存在になります。
最近は親子間で敬語を使う家庭は時々見かける程度ですが、祖父母と孫の間でしたら必ず敬語を使います。日本のように「友達のような親子」は韓国では有り得ない感覚なんです。
なお、韓国語の敬語については以下の記事で詳しく説明していますので。こちらもぜひチェックしてみてください。
4. 大人になっても、結婚しても。親子の絆は絶対的なもの
韓国に嫁いだ日本人妻にとって頭を悩ませるのが義実家との付き合いですよね。特に韓国人の夫が母親に対してあまあまだったり(もちろんその逆も然り)、自分より母親の方を大事にしているような態度を取られるという話はよく聞きます。
記述通り「みんな우리という共同体のメンバー」という認識である韓国人ですが、その中で一番近い存在が家族です。それゆえ家族間の結びつきは日本人が考える以上に強く、また上記通りの上下関係も加わり成人・結婚しても親は親、子は子なのです。何をするにも息子にいちいち口出しをする母親、常に母親に意見を求める息子はよく耳にする話です。韓国には「親離れ」「子離れ」という概念が無いように思います。
なお、韓国語のタメ語については以下で特集しています。使い方に注意が必要ですので、ぜひこちらも読んでみてください。
5. お互い助け合うのが当然。情の深さにつながるものの…
とても強くて固い絆で結ばれている家族ですからお互い助け合うことが当然です。何か困った時だけではなく、例えば義実家に行けば大量の食べ物を持たせてくれたり、やたらといろんな物をくれたり…こちらが求める以上にいろいろしてくれようとします。それが韓国人は情の深いと言われる由縁でもありますが、度を越えたら日本人にとってはありがた迷惑に映ることもしばしばです。(ちなみに韓国にはありがた迷惑に相当する言葉はありません)
また逆に言うと家族の誰かが困った時に助けてあげることも「当たり前」。そのために金銭的な事など無理な頼みでも断ることがなかなか難しく、家族間で揉めることもあります。
6. 安否電話(안부전화 / アンブチョナ)で親に近況を報告
密接な親子関係が当たり前である韓国人ならでは独特な習慣を紹介していきましょう。
まずは安否電話です。これは嫁が義実家に電話をして近況を報告するというものです。家庭にもよりますが週に一度でいい家庭もあれば毎日でないといけなかったり、義母と義父それぞれにかけないといけないという家庭もあるようです。
筆者のように特にしなくてもいい家庭も増えてはきました。特に用もないのに義理の両親に電話をかけるというのは外国人妻からすればかなりの負担です…。また逆に何の用もないのに義母から電話がかかってくることも結構あります。
7. 子どもが親へお小遣いを渡す!?
韓国では子供が親へお小遣いを渡すことが一般的です。就職して給料が入るようになったら親に月何万円か渡している人(特に男性)が結構います。それは結婚・出産しても続くので、嫁の立場からするとモヤモヤを感じざるを得ません。毎月渡している人もいれば親の誕生日や名節などの機会に親へまとまった金額を渡す人もいます。これは育ててくれたお返しという意味なんだそうですが…。
日本では親から子、孫へと見返りを求めずに金銭面も全部ひっくるめて愛情を注ぐというのが一般的な考えだと思うので、初めてこの習慣を聞いた時はなかなか理解できない人もいるかもしれませんね。
まとめ
いかがでしたか?
韓国での家族間、特に親子関係がどれだけ密接かお分かりになられたでしょうか。
上記の他に月に何回も義実家に顔を出さないと行けなかったり義理の親の誕生日には家族や親戚皆で集まるなど、日本より何かと家族行事が多かったりもします。しかし最近は家族によって様々で筆者も安否電話や義両親へのお小遣いは基本的にありません。
韓国人が言う家族は私たちが考えている以上に密接で濃い関係です。特に韓国人と結婚する予定の方は事前に韓国人にとっての家族について知っておくと結婚後のモヤモヤが減るかもしれませんよ!
韓国人にとって家族とは?在住者に聞く7つの特徴とは?
1. みんな「우리(ウリ/私たち)」である韓国の独特な家族意識
2. 日本は「公私」を区別、韓国は皆「家族」
3. 年上の言うことは絶対!家族内でも上下関係はきっちりする韓国人
4. 大人になっても、結婚しても。親子の絆は絶対的なもの
5. お互い助け合うのが当然。情の深さにつながるものの…
6. 安否電話(안부전화、アンブチョナ)で親に近況を報告
7. 子どもが親へお小遣いを渡す!?