日本の携帯ショップや家電量販店でよく目にするSAMSUNGやLG。いずれも韓国を代表する財閥企業です。韓国経済は、財閥の活動を国が支えるという形で発展してきました。そのため、韓国社会における財閥の影響力は、日本における財界の影響力よりもはるかに大きくなっています。
財閥は韓国の発展に大きな貢献をした反面、韓国社会において負の側面があることも否定できません。このように、韓国社会を深く理解するためには、財閥について知っておく必要があります。
そこで今回は、財閥企業を通じて韓国社会を深く知りたいあなたのために、韓国における財閥の実態についてお伝えします。
韓国の財閥社会!在住経験者に聞く現地の実態とは?
1. 韓国の財閥とはどんな会社を指すの?
みなさんは韓国の財閥をいくつご存知でしょうか。
韓国には「10大財閥」と呼ばれる10の財閥があります。日本でも有名なところでは、「三星 / SAMSUNG」、「現代 / ヒュンダイ」、「LG / エル・ジー」「ロッテ」などです。
韓国では、これら「10大財閥」の売り上げがGDPの4分の3を占めています。つまり、市場を寡占して、韓国経済を支配する事実上の独占資本がこれら「10大財閥」なのです。1960年代後半以降、経済成長を志向する朴正煕(パク・チョンヒ)政権のもと、国家主導の工業設備投資が大々的に行われました。
その結果、産業の各分野に、「10大財閥」のような独占的企業グループが生まれ、国家と結びつきながら経済を牽引していきました。
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2. 韓国人の財閥に対する思いは憧れ?不信感?その実態に迫る!
韓国ドラマの定番として頻繁に登場するのが、財閥の御曹司です。貧しくもけなげなヒロインにツンデレな態度で接しながらも、いざという時には地位や財力を駆使するなどしてヒロインの力になる、そのような女性の憧れの存在として御曹司が描かれています。
韓国ドラマで描かれるように、「華麗なる一族」としての財閥ファミリーは、庶民の憧憬の対象となっていることは事実です。また、韓国経済において圧倒的な安定性を持つ財閥系企業への就職は韓国の若者にとって、憧れの対象となっています。
その一方で、国家と結びつき、一族や経営する企業の私的利益を図ろうとする財閥への批判も根強く存在します。特に80年代までの独裁政権下において、政府の労働運動弾圧によって低賃金・長時間労働を実現し、利潤をあげ、企業として成長してきたことは、韓国国民の間に財閥に対する不信感を増幅させました。このように、韓国社会には財閥に対する憧れと不信感がともに存在しています。
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3. 権力との癒着
財閥は、韓国の市場を寡占して、韓国経済を支配する事実上の独占資本となっています。そのため、経済発展の牽引役というプラスの面ばかりでなく、さまざまな弊害もあります。特に、朴正煕政権以来の国家権力との関係は、その最たるものでしょう。
先にお話しした労働運動弾圧は、民主化によって表立ってはできなくなりました。しかし、財閥の産業支配力は政治をも左右できるほど大きく、民主化以降の歴代政権も財閥の意向を無視することはできませんでした。
また、莫大な資金力と組織を持つ財閥の存在は、政治家にとっても利用価値がありました。政治的スキャンダルによって罷免となった朴槿恵(パク・クネ)大統領の親友・崔順実(チェ・スンシル)氏の娘にSAMSUNGから高額な馬が贈られましたが、この背景に大統領と財閥との癒着があったのではないかという疑惑が提起されています。
このような、政治が財閥を利用し、財閥も政治を利用する、という構造の克服は、韓国社会の課題となっています。
4. 格差社会
また、国家が財閥を経済の牽引役として保護する政策のもと、中小企業は市場で圧倒的不利に置かれ、そこで働く労働者は財閥企業の労働者よりもかなり不利な条件で働かざるを得ない状況に置かれています。
一方で、財閥企業の人件費削減に有利な労働政策によって非正規労働者が増加しています。法人税の最高税率も低く抑えられ、法人税減税を進めている日本と比較してもさらに10パーセント近く低い税率となっています。財閥に有利で中小企業や労働者に不利な新自由主義的な経済政策は、90年代終盤から継続していて、韓国社会における経済格差を拡大しています。その克服もまた、韓国社会の大きな課題となっています。
なお、韓国人学生の就活状況については以下の記事で詳しく紹介されていますので、こちらも一読してみてください。
5. 日本の技術支援
ところで、韓国財閥と日本社会にはどのような関係があるのでしょうか。前述のように、あなたも日本国内の携帯ショップや家電量販店で韓国の財閥系企業の製品を目にしたことがあると思います。
これらの製品を作っている企業は、もともと日本企業の技術指導のもと、時には日本企業の下請けをして発展しました。1965年に日韓基本条約締結によって両国は正式に国交を樹立しました。以降、日本企業は韓国を安価な労働力と部品の供給先、そして日本製品の市場と見なしてきました。そのために、日本の技術を積極的に移転し、韓国企業に技術支援を行ってその目的を達成しようとしました。
このような関係は21世紀が始まるころまで続きました。
6. ライバル・相互依存
ところが、このような関係に2003年前後から変化が現れます。韓国の技術力発展に伴い、日本の技術支援のもとで成長していた財閥系企業が、みずからの力で新製品を生み出し、テレビや携帯電話などの部門で次第に日本企業を凌ぐようになったのです。こうして、日本優位の協力関係にあった韓国の財閥系企業が、日本企業のライバルとして浮上したのでした。
一方で、韓国の財閥系企業は、精密部品の供給については日本の技術力ある中小・零細企業に依存する傾向があり、韓国の財閥系企業と日本の製造業との相互依存は深まっています。
まとめ
いかがでしたか?
韓国の財閥は、韓国経済の牽引役として国家の保護のもとで成長してきました。それゆえに、中小企業や労働者に不利な状況が生まれ、社会問題を生んでいます。日本との関係では、1965年の国交樹立以来、日本企業が技術を支援することで財閥系企業の発展を促してきました。ところが、2003年ごろから韓国の技術力が急成長し、韓国の財閥系企業は市場における日本企業のライバルとして浮上しました。
財閥の韓国社会での影響力は極めて大きく、韓国社会を知る上で、財閥を知ることは避けて通ることができないものの1つです。その光と闇を知れば、さらに深く韓国を理解することができるでしょう。
韓国の財閥社会!在住経験者に聞く現地の実態とは?
1. 韓国の財閥とはどんな会社を指すの?
2. 韓国人の財閥に対する思いは憧れ?不信感?その実態に迫る!
3. 権力との癒着
4. 格差社会
5. 日本の技術支援
6. ライバル・相互依存